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[レビュー]アオナツラインの感想
2019-09-07 Sat 00:00
<作品名>     アオナツライン
<製作会社名>   戯画



アオナツライン
公式ホームページ
↑クリックすると公式HPに飛びます。

キャラクター・シナリオ : 【 EX-- 】
「夏休み、何しよう?」とこれから始まる夏に向けて相談する主人公と親友の千尋、幼馴染の海希。そんな3人の元に一人の少女がやってきて――。
5人の仲良しグループによって紡がれる一夏の青春物語。
海辺の街(湘南が舞台)を舞台とした恋愛学園物であり、『青春』をテーマに「人を好きになる」ということに対してストレートに挑んだ作品となっている。

すっきりとしたテキストは読みやすい。
各キャラからの視点の描写などをいれて心理描写をはっきりと描く一方で、物語自体がサクサク進むので、舞台で起きている出来事が非常にわかりやすく受け入れやすい。
これは扱っているテーマや展開が王道的な事も大いに関係しているだろう。

それでいて内容には一切の妥協がない。
物語のプロローグ(共通)部分における印象的な出会いやそれに纏わる出来事はもちろん、各ヒロイン√において描かれたそれぞれの『青春』の形は、人と人が交わってるからこその青臭いやり取りであり、そこにあるのは等身大の青春なのだろう。
だからこそ多くの人々の心の深い部分に共感を呼び、物語の展開においてキャラクターと共に一喜一憂して、泣きシーンではボロボロに泣けるのだろう。
それらが一つのシーンではなく、いたるところで、作品全体で成し遂げられていた点において最大の評価をしたい。

王道だからこそ多くの人に受け入れられる、と言うのは確かだが、だからこそ皆が求めるハードルも高くなっており、そこに誰しもが望むレベルのものを作り上げる…と言うのは文字にすると簡単なようでいて非常に難しいことは今までの多くの作品が証明しているといってよいだろう。
それを皆が想像する以上のレベルで成し遂げた、という点においてこの作品は歴史に残る作品と言っても過言ではないだろう。


流石にほめ過ぎな感じもあるので、この作品の悪い点について触れておこうと思う。
全体的なボリュームが不足しているという点に関しては否定できず、実際、一般的な作品の7-8割の分量しかない。
しかしながら、作品としてこれほどまでに完成されており、贔屓目でなく不足感を感じない作品であるというのもまた確かといえる。
特に今回の作品に関しては非常に読後感の良い作品になっていることが、その部分のアンサーとなるだろう。
一般的な作品であればアフター√などを求めたくもなるのだが、今作においては各ルートにおいての締めがしっかりとしており、これ以上の描写が蛇足になるということを強く感じることを付け加えておきたい。

どれだけ書いても、この作品を表現するには遠く及ばない。
「青春」を扱った作品は多くあるが、この作品ほど強く心に残るシナリオはなかったと、そう総評の括りとしておく。


共通√【 S++ 】  2h
結との出会いをきっかけとした一連の物語が描かれており、これから始まる夏に向けてやることを決めるまでのシナリオとなっている。

分量自体は少なく読みやすいこともあって非常に短く感じるが、テンポよく物語が展開するため内容は詰まっている。
物語の一部はキャラクター選択によって分かれた個別シナリオとなっている。

ここに描かれているのはどこまでも王道のストーリーであり、それらが高いレベルで作り上げられていることが最もわかる部分でもある。
特に各キャラとの印象的な出会いや、いたるところに描かれた心理描写は瑞々しく、どこかに忘れてしまった感情を思い出させてくれるため、人によっては泣けるシーンも。

特に一部展開では通常で書いてしまえばシラけてしまうような展開なのだが、それまでの展開によって物語として成立させてしまえる説得感を持たせることができており、そのレベルの高さを再確認させられる。


Character-Official-Website (1)
向坂 海希√【 EX-- 】  2-3h
主人公の幼馴染でありクラスメイトの少女。
とても快活で主人公や千尋とは親友と言える仲であり、いつも3人で行動している。
恋愛に疎い主人公をからかうなど天真爛漫な一面もある一方、悩んだ時などは優しく相談に乗るシーンなども多い。
実家は『MICO』という喫茶店を経営しており、そこの看板娘でもある。

個別√では海希が『幼馴染』であるという事が重要なポイントとなっており、主人公と海希の間にあった過去の出来事なども描かれている。
後半では海希との甘い日々が描かれる一方で、それそれが抱える『想い』をテーマとしたシナリオも色濃くなっており、それでも前を進む勇気の大切さなどを感じさせる。
そうして、今ある『青春』の日々が『過去』から『未来』へと続く『線』になる、その瞬間を見事に切り抜きシナリオへと昇華させたシナリオとなっている。
ネタバレになるため多くは語らないが、特に終盤の展開は涙無しでは語れないほど凄まじく『青春』ともう一つの要素を強く感じる名シーンが存在している。


Character-Official-Website.png
仲手川 結√【 S++ 】  2-3h
『青春』を求めてやってきた、都会の有名なお嬢様学校からの転校生。
頭脳明晰でいて容姿端麗、常に笑顔を忘れないその姿に憧れを抱かれそうではあるが、純水培養のお嬢様であるため世間知らずなところもあり、主人公たちを含めて周囲を戸惑わせることが多い。
基本的にふんわりと天然っぽい雰囲気を醸し出しているが、気になると一つに熱中してしまったりと一途で頑固な所も。

常に前向きな彼女が目指す『青春』の言葉、彼女の個別√はまさしく恋愛におけるそれを体現したシナリオとなっている。
爽やかな夏の日々と共に描かれる甘酸っぱい恋の描写では彼女の魅力をいかんなく表現しており、特に無垢な彼女が魅せる、一瞬の妖艶な部分などを表現できていたところも高く評価したい。
そして彩られた日々の裏側にある空回りする想いの様相、それらの『青春』の物語の果てに描かれた彼女自身の魅力である『心』の強さは、物語としての一つの答えを見せてくれている。


Character-Official-Website (2)
椎野 ことね√【 S+ 】  2-3h
イマドキ女子風の少し"ナマイキ"な後輩の1年生。
入学前までは地味だったため入学を機に学園デビューを果たしたが、無理をしていたためか友人関係にヒビが入り、傷ついていた所を主人公たちグループに拾われた。
最初はトゲトゲしい態度が多かったものの、共に日々を過ごすことで心を開いてゆく。

個別√では共通ルートではみせられなかったことねの懐いてくる小動物のような可愛い所や、小悪魔のように翻弄させて来るシーンなど見どころも多く、
特に恋愛方面については特に恋を自覚したシーンの破壊力は中々の物。

シナリオ部分においても、彼女のとある「夢」の為に全員が協力してゆく物となっており、『好きな人の前でこそ最も輝きたい』という彼女の乙女心を良く表現した話になっており、その内容もあわせてしっかりとした青春の一ページが描き出されている。



[ 主人公 ]及川 達観
学園の2年生。
ごくごく平凡な青年であり、容姿の優れた海希や千尋といつも一緒にいるため、不釣り合いと評されることも多いが、本人はあまり気にしていない。
心のパーソナルスペースが狭く、困っている人などを見ると見逃すことができないほどおせっかい焼きでもある。


【推奨攻略順 : 結→ことね→海希 】
攻略順は結とことねを逆にしても良いだろうが、海希を最後に回すことを推奨したい。
しかしながら基本的にはこの順番が最も綺麗だと思われる。


CG : 【 S 】
細い線に淡い塗りの絵で全体的にすっきりした印象を受ける。
立ち絵とCGで少し印象の違うものなどもあるものの、全体的に高品質と言ってよいだろう。
キャラクターも3キャラということで1キャラに対する分量は通常の作品より多めではあるが、全体量は一般的。


音楽 : 【 S++ 】
BGM20曲、Vo曲5曲と言う構成。
特筆したいのはビアノ曲の素晴らしさであろう、特に「光源」や何か始まりを感じさせる「Standing in the line」などは作品を作り上げる大切な要素の一つとなっている。
Vo曲にかんしては至極の一言につきる。
どれもお勧めだし、どれをとっても名曲中の名曲なのだが、どうしても1曲と言う事であればED「海岸線」のサビからは、メロディ―の美しさ、歌詞やシチュもあっていつ聞き直してもこの作品を思い出せるものとなっている。


お勧め度 : 【 EX-- 】
恋愛学園物としてストレートに「青春」をテーマにした作品。
心理描写に重きを置いているので中身が深く、それでいてサクサクと展開してゆくため、テキストが読みやすいこと、展開としても王道のものが多く、初心者から玄人まで楽しめるのはもちろん、作品自体が高クオリティのシナリオ、音楽、CG、で作られており、誰にとっても記憶に深く残る作品となっている。
舞台となっている海辺の街、湘南の素晴らしさも加えて最高クラスのこの評価。


総合評価 : 【 S++ 】
上記までの評価にある通り文句なしでこの評価、強いて言うなら物語の短さに対してだけだろう。


(ぶっちゃけコーナー)
青春物語としては本当に目を見張るレベルといえるな…。
神作…って言葉はあまり好きじゃないんだが、それを評してもいいと思う。
このレベルの作品はもうしばらく出てこないんじゃないかな…素直にそう思うわ…。

この作品で一番すごい√は? って聞かれたら迷わず、海希√って答えると思う。それくらい完成度が高かった。
あまりネタバレしたくないからこれ以上はホントにプレイして確かめてほしいけど、彼女の√で感動できるのってただの恋愛物語ではなく、これが『青春』をテーマにしているからなんだよね…。
主人公とヒロインだけじゃない世界間で描かれているからこそ、この物語はこれほど深く心に突き刺さるようになったんだと思う。
少なくとも、海希√に関してはその色が強いと思うんですよね

あと影に隠れがちだけど、この作品は結というキーパーソンとの出会いによって物語が大きく進展している。
常に前向きな彼女が目指す『青春』、その目的に対して強い心で進んでいく姿に動かされるようにして変わってゆくんですが…そんな彼女の考え方に『人』を『点』と置き換え、それぞれの軌跡…つまり人生を『線』と表現する描写があって、それがテーマの一つとしてすごく取り上げられていた。
こういう考え方がすごく好きで、こういうゲームは人生の一部を切り抜いていて…それらは簡単に少人数で描き切れないんですよね…。
色々な線が重なったり絡まったり…そうして描かれたのがタペストリーみたいに、一つの絵になってる…。
その過程にあるのが今回の物語であり、だからこそリアルな学園物になるんだと思う。
主要キャラは5人しかいないんだけど、そのあたりをすごく強く感じる作品だったなぁ…。
特に、すべてが終わってからのあのシーン…あのあたりが、この作品で伝えたいことのすべてだったと思う。
もうあのシーンにたどり着いたころには、そういうのどうでもよくなって、ただただ感動して泣きまくってた気がするけどねw
海希ラストシーンからのあの流れは本当に皆に体験してほしいわ…。

他にもいろいろ語りたい事はあるんだよね、過去編の心えぐる感じとか、楽曲のすばらしさとか、フェスの背景音楽の遊びでテンション上がった事とか、でもそれ語りだすと完全にネタバレ領域に踏み込みそう…w
だからこそ繰り返しになってしまうけど、いくら書いてもこの作品のすばらしさは伝えきれなさそう。
申し訳ないことだけれどね。
青春をテーマにした学園物ですごくお勧めしていますよ、ってことだけ最終的に伝われば、後は難しく考えずにプレイしてほしいっていうのが本音。
プレイした人同士なら熱く語り合える作品になると思うので。
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[レビュー]その日の獣には、の感想
2019-06-08 Sat 00:00
<作品名>     その日の獣には、
<製作会社名>   minori


その日の獣には、
公式ホームページ
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キャラクター・シナリオ : 【 S- 】
演劇部に所属する主人公たちが、「夏の大会」に参加するために練習を続けるある日、メンバーの一人である舞雪が噂の幽霊「クロガネ」に出会うことから物語が始まる。

舞台は一般的な学園における部活物。
日常シーンは演劇部に所属している主人公たちの練習シーンがメインとなっており、その中で生まれるの葛藤、関係の変化など、結成したての演劇チームにある不和や感情のぶつかり合うシーンが多く描かれている印象が強い。

青春学園物の負の部分も大きく取り上げているのだが、そこに「オペラ座の怪人」のような謎の存在「クロガネ」が出てきたりと、一筋縄ではいかない物語となっている。

一部特殊な設定はあるものの、舞台や設定は今までの作品と比べても非常に現実的であり、読みやすさという点においてはサクサクと読める内容になっている。

作品としての雰囲気作りに関しては流石という他なく、その完成度が高いのは確かなのだが、それだけにシナリオの内容の薄さが悪目立ちをしている印象は強い
もちろんどのルートにおいても、物語としての緩急はしっかりとあり、状況に対して葛藤を抱くキャラクターの内面に関しては良く描写されていた。

一方で、シナリオのテーマ性の薄さや物語自体のボリューム不足は深刻。
共通ルートはチームとしての結成までを端的に描いており短めなのだが、それ以上に個別√が短く、また展開としてどのルートも非常に似ていることがシナリオの薄さに拍車をかけている。
物語自体の展開が似ているだけに、それぞれのキャラクターの内面描写の幅も乏しくなっており、シナリオの短さからくる主張の薄さ、デウス・エクス・マキナのような存在に毎回物語を左右される主体性の無さがこの作品のシナリオ部分に大きな影響を与えていたように思える。

そのシーンにおける雰囲気を重要視するあまりに、作品を通しての主張が弱くなっており、何がしたい作品なのか伝わってこなかったのは痛恨の痛手といえるだろう。


共通√【 S 】  2-3h
入学から2か月後、夏に向けて活動する演劇部を描いている。
シナリオ自体は短く、プロローグ部分に当たる部分を終えて流れるOPの後は直ぐに個別分岐に入る。

部活物としては、演劇チーム内の不和などが多く描かれており明るさこそないものの、謎の人物「クロガネ」の登場などを基軸に、「不思議な物語」として物語の緩急は強い。
特に物語の舞台となる学園の描写――描かれる世界観のリアルさ――や、重要なシーンに引き込むまでの演出はさすがという他ない。


? キャラクター|その日の獣には、|minori ? (2)
池貝 舞雪√【 S- 】  2-3h
主人公の幼馴染。
演劇自体に興味はあまりなかったが、主人公たちに憧れて学園入学後に演劇部に入部した。
元気いっぱいで、勢い余ってドジることも多い。
気は弱いが自分の意思をはっきり持っており、多少頑固な面もある。

個別√では舞雪の抱える初恋や自身のコンプレックス(自信の無さ)がテーマになっており、全体的に純愛作品のような雰囲気の作品に近い。
しかしながら、物語としてはあまり大きく盛り上がる事もなく、割とスタンダードな展開が続き、結末に関しても驚きはない。なお、舞雪の姉である菫の話なども多少出てくるものの、割となおざりに扱われているのは少し悲しい所。


? キャラクター|その日の獣には、|minori ? (1)
友瀬 瑠奈√【 S 】  2-3h
学園の一年生で主人公とは同い年の義妹。
子役として活動していたことがあり、演劇部に所属してからその経験を活かして一目置かれた存在となっている。
自分の演技にプライドを持っており、周囲にも同様のレベルを要求する事が多々あるため、演技の事では周囲とぶつかることも多い。

個別√では間違った選択によって自身と向き合う事をテーマに描かれており、自身の抱える弱さと、自分の本当の望みを知り、それらを受け入れることで一回り成長する。
共通ルートではただの自己中心的な人物に思われがちな瑠奈、彼女の繊細な内面をシチュエーションを活かして描いていたストーリーとなっている。


? キャラクター|その日の獣には、|minori ?
深浜 祈莉√【 S 】  2-3h
学園に所属する1年生。
幼い頃から体が弱く、通学も今回の学園が初めての為にいつも一人でいたのだが、主人公に誘われて演劇部に所属することになった。
つかみどころのない性格をしているが、基本的には天然な性格をしている、しかし本人はかたくなに認めない。
実はお金持ちの一人娘らしく、学園の理事長や学園長が彼女の関係者である。

攻略にロックが掛かっているだけあり、祈莉の個別√ではこの作品にタイトルにもなっている謎の劇「ソノヒノケモノニハ、」の真相やその意味、そしてクロガネの正体についても言及されている√となっている。
しかしながら、相対的に祈莉自身の話は薄くなっている。
元々他人とあまり関係を持つことができなかった祈莉だからこそ、人とのつながりについてがテーマとしては描かれていた。


[ 主人公 ]友瀬 律希
演劇部に所属する学園の一年生。
とある目的の為、演劇部での活動に熱を上げている。
基本的には常識人であり、暴走しがちな妹の瑠奈のフォローをすることも多いのだが、やはり兄妹なのか、芝居の事になるとしばしば熱くなることも少なくない。


【推奨攻略順 : 瑠奈→舞雪→祈莉 】
祈莉のみ、瑠奈と舞雪を攻略後に攻略可能。
基本的に前者二人は好きな順番でよい。


CG : 【 S 】
線がしっかりとした質感の良い絵。
CGに関してはシナリオの長さもあって、分量的には気にならないだろう。
光りの使い方はいつも通りレベルが高く、立ち絵ですらイベントCGのように見えるほど完成度が高い。また、立ち絵だけではなく、イベントCGの口元をセリフと合わせて動かす技術なども引き続き健在


音楽 : 【 S+ 】
BGM43曲、Vo曲4曲(OP1/ED3)という構成。
Vo曲ではやはりOPの「Limelight」が勢いもあり、特にサビ部分からの流れはminoriらしさを感じた。
全体的にゆったりとしていて美麗なBGMが多い中、「Tension」や「Beast」といった楽曲は作中での雰囲気を一気に変化させ、場面転換としての効果はもちろん、物語自体の緩急をつける意味でも一役買っていたように思う。


お勧め度 : 【 S 】
作品の雰囲気という意味での完成度は高い。
半面シナリオ単体で見た時の内容はあまりよくなく、玄人にとってはあまり楽しめる内容にはなっていないかもしれない。
今までのminori作品のどこに魅力を感じるかによってお勧めできるか否かが決まっており、入門としてのライト層にはお勧めしやすい作品である。


総合評価 : 【 S 】
全体的な完成度の高さは確かにあるのだが、それだけにシナリオが足を引っ張っている感は抜けず、あまり高い評価にはできない作品。


(ぶっちゃけコーナー)
まぁ、ぶっちゃけて言うと雰囲気ゲーってのは褒め言葉ではない気がする。
昔の作品と比べると――あまりやるべきではないのかもしれないけど――明らかにシナリオ部分の弱体化が目立つよな。

この作品をやると分かるんだけど、本当にどのルートも展開が一緒なんだよな。
リスクがないから緊張感がないのも、展開が予想できてしまってあんまり良くないよな…。

シナリオをプレイすることで、キャラクター達の事はよくわかるんだけど、心に残るものがないというか…毒にも薬にもならぬ物語ってのはある意味で一番悪い。
忘れられてしまうその他多くの作品って意味だからなぁ…。

作品としては理解しやすかったり、美麗な世界観とか、、、もちろんほめるべき点もあるんだけど、それはもともとminoriのアピールポイントでもあるわけだしなぁ…。
キャラクターが魅力的なのも確かなのだけれど、個人的に評価するポイントはやはりシナリオを重視しがちだから、そこからもう一歩先に進んでいる作品じゃないとお勧めしにくいのは確か。
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[レビュー]空に刻んだパラレログラムの感想
2019-05-09 Thu 00:00
<作品名>     空に刻んだパラレログラム
<製作会社名>   ウグイスカズラ



空に刻んだパラレログラム
公式ホームページ
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キャラクター・シナリオ : 【 S 】
クオリアという特殊な力を使うことで空を飛ぶことができるようになった世界感において、空中で行われる架空のスポーツ「テレプシコーラ」をテーマとした作品。

音楽も合わせて悲壮感溢れる設定、そして試練の続く展開が印象的な今作は全編を通して割と暗めの展開が多い。
スポーツをテーマにした作品は数あるが、プレイをする上で生まれる様々な葛藤や絶望についてスポットをあてて描いた作品は少ないが、今作でメインとなるのはまさにそういった選手たちの負の感情である。

過去のウグイスカズラ作品と同様に、登場するキャラクターの心理描写においては他作を寄せ付けないほどしっかりと描き切っている。
特に今作では登場キャラクターも多かったのだが、敵側の「境 遼二」を筆頭にキャラクター達をしっかりと内部まで描写しており、それそれぞれが違った魅力を持っていたことに関しては非常に高い評価をしたい。

一方、部活をテーマにした青春物で最も盛り上がる試合シーンにおいて、今作では多くの回想シーンが入っている。
挿入される各人からの視点によるシーンはは各キャラクターの内面を描くという点では良い働きをする反面、あまり得られる情報の無い回想シーンが繰り返し挟まれているため、物語が展開するテンポを非常に悪くしている。
作品のボリュームこそ多いが、物語中盤から試合以外のシーン描写がほとんどなく、その長さに対してシーンの中身がないのもこの作品の弱点と言える。
この点に関しては読む人の相性にもよるのかもしれないが、ウグイスカズラという作風がこのタイプの青春物に対して非常に相性が悪かったような印象を受けた。

今作のテーマとなっている「テレプシコーラ」やそれに関連した描写について。
架空のスポーツということでルールなどが気になるところだが、共通ルートにおいて「空中で行われるバスケの3on3」という説明以外で特に詳しい説明はされていない。
矛盾するようなシーン展開や設定などもいくつか見つけてしまっている上、「何故この選手はこんなにも苦しいのか」「なぜこんなに絶望しているのか」そういうものが伝わってこないと感情移入することも容易ではなく、後付けのような設定が出されることも多い今作ではそのあたり気になる部分も多かった。

今作の主人公についても、もどかしく思う人が多いはず。
特に共通ルートでは冗談抜きで、本当に何もしないことが多く、用意した対応策も結局のところ時間で解決させる展開が定番となっていた。
結果的にヒロイン達が自己解決することになってしまい、主人公以外のところで物語が動いているシーンが非常に多い。
監督としての能力を余すところなく発揮せよ、とまではいわないものの、どのようなスポーツであっても監督という役割は重要なポジションなので、もう少し効果的に動かしたかったところでもある。

TRUE√を筆頭に評価すべきシーンや演出、設定があるのも確かであり、その心理描写を含めて作品として光る部分は大いにある。
だが描写すべき選手たちの内面を重視するあまり、屋台骨となっている「青春学園物」という部分がおろそかになっているのも確かであり、どうしても盛り上がりの欠ける感動しにくい作品になっていた、というのがシナリオ全体の感想である。
※この辺りは本当に人によって差が出る

誤字脱字だけではなく、表示するCGの間違いや設定の不備、音量設定等のシステム面でのバグが目立っていたことも追記しておく。


共通√【 S+ 】  13h
第二テレプシコーラ部内のトーナメント終了までが描かれている。
ここに至るまで恋愛的な描写はほとんどなく、中心となるのは「テレプシコーラ」という架空の競技について。

練習を含め描かれているテレプシコーラの風景も多く、分量としては目を見張るほどで、特に試合中に挿入される各キャラの過去やそのシーンにおける葛藤等の心理描写が中心となっている。

基本的に登場するキャラを虐められるような設定が何度も登場し、全体的に暗く重たい雰囲気が漂う内容となっている。
それらの障害を乗り越えるシーンはあるものの、どうしても次に来る絶望を大きく描いているのでフラストレーションが溜まりがちな内容となっている。

まったくもって王道から外れて入るものの、心理描写に重きを置いたその演出やシナリオはもう一つの青春物としての在り方を示す。
ある意味幻想をもってプレイした人にとってはつらい部分にもなる。


彼杵 柚√【 S 】  1.5h
主人公と死別した幼馴染に似た少女。
純粋で真っすぐな性格をしており、空を飛ぶためだけに葛切学園に転入してきている。
テプシコーラに関してはまったくの素人であり、運動神経――特に反射神経には目を見張るものがあるが、物語の序盤では空を飛ぶことすらままならなかった。
しかし、空を飛ぶことが大好きで、どんな苦境に立たされても諦めない鋼のメンタルを持つ。

個別√では第一に君臨する「境遼二」という最強のキャラを中心とした話がメインとなっており、最後まで読むことで彼に関しての印象がガラリと変わる√でもある。
恋愛描写を含め主人公と柚の話は後半部分のみで、軽く未来を向いて頑張ってゆくような無難な内容になっている。


heroine_ria_story.jpg
有佐 里亜√【 S 】  1h
とても優しい性格をした面倒見の良い女の子なのだが、、物心つく前からの幼馴染である主人公にだけはツンツンとした態度をとることが多く、「嫌い」と公言している。
第二に所属するが、誰ともチームを組むことなく1年を過ごしていた。
オラクルの生成量は少ないが操作は上手く、非常に綺麗なフォームで飛ぶ事ができる。

個別√では主人公と里亜の心に残る「紅」についてがテーマになっており、そこにサブキャラである留学生のイーリスを絡めた√となっている。
恋愛描写については本当に短いのだが、里亜の魅力はなんといっても終始崩されることなく貫き通されたツンデレキャラであり、その部分が好きな人は多いはず。


heroine_hari_story.jpg
宝生 玻璃√【 S 】  1h
控えめな性格をした主人公の妹。
気弱で人見知りをするタイプだが、頑固な一面もある。
加速を持ち味とした個人プレーの技術は中等部では敵なしと言われるほどだったが、その反面チームワークを必要とする場面は苦手としている。

個別√ではガラス細工のように繊細だった玻璃の精神面についてを中心としたシナリオになっているが、共通√で取りあげていたとある人物への感情が軽く流されるなど、内容としては薄いと言わざるを得ない。
恋愛面についてはもちろん兄弟の恋愛についてもテーマになっているのだが、そちらについては軽く触れるだけにとどめられ、基本的には甘々な内容。


heroine_hotaru_story.jpg
藍住 ほたる√【 S 】  1h
第一に所属する先輩で、過去には主人公とチームを組んだこともある。
実力も確かなのだが、最近は不調に喘いでいるが、クールな表情からはそんなことを一切感じさせず、猫のように掴みどころが無い性格。
第一に所属しているだけあり、そのテクニックは非常に高いといってい差し支えない。

短い個別シナリオの中でほたると主人公の関係をかけがえのない物として描いている。
今まで登場したキャラクター達の背景も少しだけわかり、大きく印象が変わって見えるのもこの√の大きな特徴と言えるだろう。
恋愛描写においては、いつも感情を表現に出すことがないほたるが、真っすぐに主人公に好意を示し、そして甘えてくるシーンは非常に貴重。


TRUE√【 S+ 】  4h
1周目から攻略できる、今作の集大成ともいえる√。
当然だが共通ルートの続きの内容となっており、共通ルート+TRUE√が今作の全体と言っても過言ではないだろう。

今まで溜めることになったフラストレーションを解放できる部分でもあり、盛り上がるシーンも今まで以上に多く、それだけに終盤のシーンなどは演出も含めて今作最大の見どころと言える。
この√だけを抜き出して考えるならば、青春部活物としての
依然として試合シーンのテンポは悪く、一部にCG表示ミス等や、テレプシコーラについて詳しく記載しなかったからこそできる後出しの設定等々もあり、素直に称賛できない部分があるのも確か


[ 主人公 ]
かつては空を自由に翔る選手だったが、とある事故により選手をあきらめることに。
今作では監督としてヒロイン達の成長を促す立場。
基本的に本当に何もしない放任主義が持ち味。
時折行動することもあるのだが、ヘラヘラと笑うのみでその心はだれにもわからず、つかみどころがない。


【推奨攻略順 : ほたる→玻璃→里亜→柚→TRUE 】
TRUEは1周目から攻略可能なので、本作をさくっとやりたい方はそちらを先に。
各個別は好きな順番で構わないが、TRUEの一部ネタバレを含む。

CG : 【 S 】
細く繊細な線、淡い塗りの絵。
立ち絵やイベントCGは共通してふんわりとした雰囲気が漂う。
枚数も多く、時折バランスやパースが気になるものもあるものの、総じて安定した質の絵が多い。過去回想では水彩みたいな絵が多いのも印象的。


音楽 : 【 S+ 】
Vo1曲(OP)、BGM22曲という構成。
BGMは全体的に落ち着いたものが印象に強く、とくに「蛍火」などどこか不安も漂うBGMはウグイスカズラならではと言えるだろう。
OPの「クオリアの輪郭」は疾走感あふれ、プレイ後に聞くとシナリオを想起させる良曲が採用されている。


お勧め度 : 【 S+ 】
架空のスポーツ「テレプシコーラ」をテーマにした青春部活もの。
ウグイスカズラのらしく心理描写に重きを置いており、一般的なスポーツをテーマにした作品とは大きく違った雰囲気を持つ。
公式HP等をみて王道の青春物を想起してプレイしようという人はもちろん、ウグイスカズラにとっては挑戦の作品でもある為、今までの作品が好きだった人にとっても賛否が分かれそうな内容になっている。
設定を聞いて「蒼の彼方のフォーリズム」を想起してプレイする人は、かの作品とシナリオの趣向が大きく違うため特に注意が必要。


総合評価 : 【 S 】
スポーツにおける葛藤を描いた心理描写はさすがという他なかったが、青春物とそうした描写の相性が悪く感じられ、テンポが悪い作品になっていた印象も強くこの評価に。


(ぶっちゃけコーナー)
あまりこういうことはしてはいけないのだけれど、同じ空を舞台とした架空のスポーツとして「蒼の彼方のフォーリズム」がある。
かの作品とくらべると物語の展開や試合の描写はお粗末というほかなく、描写されるCGですらも比較すると劣る。
かの作品は努力と友情と勝利という、王道でいて誰でもわかりやすい名作をつくっており、個別√にて様々なバリエーションを出していたが、今作は個別√の内容もなく、主軸となっている物語もコンセプトこそ異色だが、青春学園物との相性が非常に悪いテキストであり、最終的なTRUE√において、どうしても感動に至ることができない内容になっている。
今までの持ち味だった後半にかけてのガラリと物語の印象を変える伏線、そういうウグイスカズラならではの魅力がなかったのは非常に痛い所といえる。
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[レビュー]言の葉舞い散る夏の風鈴(こえ)の感想
2019-05-02 Thu 00:00
<作品名>     言の葉舞い散る夏の風鈴(こえ)
<製作会社名>   シルキーズプラス DOLCE



言の葉舞い散る夏の風鈴
公式ホームページ
↑クリックすると公式HPに飛びます。

キャラクター・シナリオ : 【 S++ 】
新設の「声優部」を舞台として、声豚の主人公を始めとした個性豊かな登場人物たちが、部活を通して成長する様子を描いた青春学園ラブコメディ作品。

古き良きオーソドックスな始まり方をする今作は、テキストにおいても表現が簡潔でありスッキリとしているので読みやすい。
舞台となる『声優部』からわかるように、声で活動する部活動をテーマにした少々異質ともいえる設定ではあるが、そうした影響もあってプレイしていて戸惑うことはない。

今作では全編を通して、キャラクターの「成長」というものが特に重要なファクターとして扱われている。
恋愛シーンにおいても、それ以外のシーンにおいても、物語が進むにつれて変化してゆくキャラクター達の心の動きが非常に丁寧に描写されており、この「言夏」という世界へ読み手を引き込む効果的な役割を果たしている。
登場するキャラクター達と一緒に笑い、そして時には挫折し、最後には勇気を持って立ち上がる――作品をプレイすることで王道の青春物語を追体験できる、そうした流れをしっかりとなぞっているからこそ、本作における重要なシーンに心動かされ、感動で泣けるシーンが確かなものとして存在している。

上記に述べたような、感情を丁寧に描写したシナリオもこの作品の大きな魅力の一つだが、この作品の最大の魅力は作品のテーマにもなっている「声」だろう。
特に今作では、各キャラクターボイス担当の声優さんが非常に高いレベルの熱演をされており、各シーンでの神業的な演じ分けは、声優自体に興味がない人であっても度肝を抜かれるほどの迫力がある。
特にキャラクターの成長、という面においてはこの声無くしては表現しえなかった部分が大いにある事はしっかりと明記しておきたい。
シナリオだけではなく、そうした声優の熱演や作品自体の演出があってこそ、この作品の感動シーンにつながったといっても過言ではないだろう。

ラブコメディ作品というだけあってギャグパートについても高く評価できるものになっている。特に作品の設定を活かしたシチュエーションのものが印象的で、主人公の声が付いたエチュードのシーンはお腹を抱えて笑いたくなるほど秀逸で、こちらも高く評価した。

シナリオにおいて強いて欠点を言うなら、物語を俯瞰的に見た時の起伏の無さである。
現実的に冷静に物語を見た時に、この作品に起きる物語は少し事件性が薄く、どうしても興奮しにくい展開が多くなっている。
繊細な心の変化に重きを置いた作品だからこその弱点なので、仕方がない所ではあるものの、作品をプレイした人によっては評価が大きく変わる可能性もある。
また、誤字等を見る部分が多かった事も、少しだけ気になる所として追記しておく。

最後になったが、各ルートで扱うテーマは違うものの、繰り返す練習の中で伝えたい「声優」という仕事について、「自身と向き合うこと」の大切さ、その主張をブレることなく、作品自体に落とし込んで表現しえた事に最大の賛辞を送りたい。


共通√【 S+ 】  3-4h
主人公の入学から、「学生声優グランプリ」へにむけて挑戦するところを描いている。

シナリオの分量はそこまで多くないが、サクサク読める文章なのでテンポよく話が進み、描かれた日数としては短いのだが、その中にも部の立ち上げや声優コンテストといったイベントが詰め込まれ、しっかりと中身が詰まっている。
中盤では泣きシーンなども存在しており、声優という特殊な部活をテーマにした作品だからこそ描けるギャグシーン、盛り上がるシーンも用意されている。
しっかり青春ラブコメディの導入部分の役割を果たしつつも、言夏の世界観にどんどん引き込むようなその内容を高く評価したい。


kotonatu (1)
真額 詞葉√【 EX-- 】  4h
CV : 桜川未央
大人気のプロの声優「日華こころ」として活動しているクラスメイト。
顔出しNGではあったがの、主人公に正体がバレてからは、主人公を声豚となじったりとからかってはそのやり取りを楽しんでいる様子。
演技はプロということもあり天才的なのだが、教えるのはうまくない。
仕事のせいで主人公と同じく1度留年している。

3キャラ攻略後に『真夏の卒業式』という形で√が出現し、誰とも付き合わずに全√を経た後の話という設定から話がスタートしている。
恋愛描写においては、詞葉がいつものように主人公をからかう、その中に少しの甘えを感じることができるシーンがあり、物語が進行するごとに近くなる主人公との距離やその感情の変化を丁寧に描き出していた。

個別√のテーマとなるのはもちろん詞葉のプロ声優として「再起」なのだが、同時に√タイトルにある「卒業」も物語に絡められている。
今までの全ヒロイン√を下地としたシナリオは部活をテーマとした青春学園物ならではの感動的なシナリオとなっており、複数の泣きシーンが存在している。
「声優」という仕事への情熱やその大変さを感じると同時に、甘酸っぱくも煌めくような青春の一ページがそこにある、そう感じさせる√となっている。


kotonatu (3)
野原 ゆう√【 S+ 】  3h
CV : 遥そら
声優に強い憧れを抱く、あがり症の1年生。
基本的に控えめで、人前に立つと緊張からテンパる事も多いが、声優関係の事となると意外と押しが強く、一直線に向かってゆく行動力もある。
演じる事自体は好きだが、いつも一人で練習していたために棒読み。

ゆう√では、素人同然だった彼女が「声優のプロ」を目指すために頑張ってゆく、そんな「成長」をテーマにしたスタンダードな青春ストーリーとなっている。遥そらさんの見事な演じ分けの効果もあり、挫折を経験しながらも成長する王道ストーリーは感動必須。
もちろん、恋愛描写においても「野原ゆう」というキャラクターを活かし、本筋のシナリオに上手に絡めつつ、むっつりな所やおねだりの可愛いさという新しい魅力についても見せつけてくれていた。


kotonatu (2)
菩提樹 仰子√【 S+ 】  3h
CV : くすはらゆい
2度も留年をしている、のんびりマイペースな世間知らずのお嬢様。
おっとりとした性格をしているが意外と頑固なところもあり、2年前に演劇部のオーディションに落ちた悔しさから『声優同好会』を立ち上げた。
しかし二年間の努力の甲斐もなく、縁起は完全な大根役者のまま。

仰子が主演を務めることになった「一花、行きます」の話を中心に進んでいく個別√。
恋愛描写においては、天然お嬢様である仰子にしか出せない独特の空気感や、無邪気に好意を示してくれるその姿が非常に魅力的で、特に主人公とのゆったりとした言葉のやり取りは見ていて心地も良い。
そして終盤のシーンも感動的で、声優というテーマを活かしつつ「友情」という青春要素をギュッと詰めた、多くの人が涙腺を破壊されるだろうシナリオになっている。
ある意味でくすはらゆいさんの新しい可能性を見た、そんな√になっている。


kotonatu (4)
百花 奏√【 S+ 】  3h
CV秋野花
ひかえめな性格の車椅子少女。
主人公とは元々知り合いで先輩と後輩の関係だったが、今はクラスメイト。
生まれつき足が悪く、インドアな趣味を主に嗜んではいるが2次元の話題には疎い。
演技に関しては、初めて出場した声優コンテストで受賞するほどの天才肌。

個別√では「夢への一歩」を練習する中で奏が自分と向き合ってゆく事になる。
恋愛描写においては彼女の身体の事もあり、いつも控えめな後輩ポジションとして密かに主人公の事を慕う姿勢を崩すことはなく、他にはない魅力を存分に発揮している。

一方、奏での身体の事を重要なテーマとしているシナリオなのだが、それ以上に「声優の仕事」というものに対しての考え方等も深く絡ませた内容になっており、その道のプロであった詞葉を絡めたシナリオは、演出も相まりラストシーンで見事爆発してくれる。
共通ルートでも泣かしてくれた奏だけに、個別√の期待値も高かったが見事にその期待に応えた非常に良い内容となっている。


[ 主人公 ]波瀬 督
親の都合により1年間の留年を余儀なくされた少年。
二次元が大好きで、特に声優に関しては並々ならぬ情熱を傾けている、自他ともに認める声豚で「日華こころ」の大ファンでもある。
『駄目絶対音感』の持ち主でもあり、声優の声を聞き分けたり、高精度の脳内再生能力などがあり、作中では音監として動くことが多い。

ちなみに全編で演技時のみ声があり、声が出たときはギャグシーンとして秀逸


【推奨攻略順 : 仰子→ゆう→奏→詞葉 】
詞葉√以外は攻略順が自由であるが、とあるシーンの為にもこの順番で攻略することを推奨したい。


CG : 【 S 】
細い線、淡い塗りの絵。
枚数自体は一般的な量数であり、質も全体的に安定している。
凄まじく美麗というわけではないのだが、しっかりと締めるべきところでイベントCGが用意されているために見入ってしまう事も多い。
背景の一部に実写のようなものがあったりと、その点だけバランスを考えると欠点と言えるところもある。


音楽 : 【 S+ 】
BGM25曲、Vo曲2曲(OP/ED)という構成。
OP「言の葉舞い散る夏の風鈴」は薬師るりさんが歌う、清涼感のある良曲で、一方のBGMは全体的にあまり存在を主張しない穏やかな曲調のものが多い。
しかしその中でも「感動」や「友情」、「卒業」といったBGMはシナリオの陰で声優の演技の邪魔することなく、しっかりとした感動できる場面演出をしていた。

お勧め度 : 【 S++ 】
「声優部」を舞台に繰り広げられる青春学園ラブコメディ作品。
「声」をテーマとした作品だけあって、登場するキャラクター(声優さん)たちの熱演はこの作品の最大の魅力と言える。
また王道ともいえる多くの人から愛される青春のストーリーは平凡な面もありつつ、その中で煌めく一瞬の輝きを良く描いた感動できる作品となっている。
声優が好きな人だけではなく、あまりこうしたゲームに触れてこなかった人にこそ強くお勧めしたい作品ではあるものの、アペイリアのイメージから来ると大きく印象が違うのでその事にだけ注意する事。


総合評価 : 【 S++ 】
部活を青春学園物の中では全ルートにおいてシナリオの質が良く、声優さんたちの演技との相乗効果もあり、名作と呼んでも問題ないレベルの作品となっているためこの評価。


(ぶっちゃけコーナー)
今作は正直好き嫌いの別れる作品なのかな、と思った。
個人的にはかなり押したい作品なのだが、それは私自身のプレイ状況や好みによるものが大きいようにも思う。(※感想というのは元来そういうものだが)

一つは、この作品は世界観にどっぷりと嵌れるかどうかで大きく評価が分かれる。
上記でも語ったが、物語として俯瞰的に見た時にこの作品は全然物語が大きく動いておらず、人によっては起承転結がない…という人までいるのではないだろうか。

ただ、こういうと語弊が起きそうであるが、この作品はどれだけ登場するキャラクターの心に寄り添えたかによって感動するレベルが変わってくる。
プレイしていて、詞葉の「声豚」と罵る声に次第に愛情が含まれるようになっていったり、自信がない ゆう がそれでも最初に声をかけるシーンから成長や仲間への想いを感じたり…全てを通してどっぷりとプレイした人間にだけしかわからないであろう、この作品の魅力はたくさんあるのだけれど、それは万人共通のものではない。
結局、作品として評するには「王道の青春学園物」と言うしかないのが悔しい所。

個人的な評価としては、感動させる要素は十分あるとして高い評価をしたものの、そうした感想を受けず無い人もいるだろう、そうした印象の差を避けるためにも、今作では体験版のプレイを推奨したい。
もしも体験版で感動しそうになったのなら、その人にとってこの作品はその後も大きく感動できる作品になるだろう。
逆に、まったく感じられなかったのならばあまり感動できない可能性も高い。

部活動を通した青春シーンや魅力的なキャラクター達との恋愛シーン、主人公の捧腹絶倒のギャグシーンなど、言葉を重ね、熱い思いで誰にでも推しておきたい部分はたくさんあるのだが、結局体験版をやってしまうのが速いのだろうね。
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[レビュー]Summer Pockertsの感想
2018-12-20 Thu 00:00
<作品名>     Summer Pockerts
<製作会社名>   Key


Summer Pockets
公式ホームページ
↑クリックすると公式HPに飛びます。

キャラクター・シナリオ : 【 EX-- 】
眩しさだけは忘れなかった…、そんな懐かしさに帰る夏の物語――と公式が称すのは瀬戸内海にある直島をモデルとした架空の鳥白島を舞台とした一夏の物語。

シナリオ全体について最初にまとめてしまうなら、一つのテーマに基づいて作られており非常に完成度の高い内容になっている。
特にグランドルートへの流れとなっているALKAやPocketsと言った部分に関して、詳しく言うとネタバレになる為詳細は伏せるものの、伏線の回収はもちろんのこと、物語全体を収めるという役割をしっかりと果たしつつ、泣けるシーンでは『Summer Pockerts』という作品の持つ真価を見せつけてくれたように思う。

個別√に関しては出来の差が大きいというのが正直な感想。
もう会社の作品として(というか作風としても)AIRやCLANNAD、リトバスと比べられてしまう野は言うまでもないが、それらの作品に比べるとどうしても押しの弱い√やどこかで見たような設定が多くあったのは言うまでもない。
上記のような点は確かにあるものの、その中でも紬√や鴎√には特に光るものがあり、古き良きシナリオを引き継ぎつつ、その中で新しいものを作ってくれていた。

シナリオとしては過去の大ヒット作に迫る様相をみせており、その他の部分として挙げられるのは日常シーンや脇役の存在だろう。

日常シーンはややギャグ多めで、今までの作品同様に選択肢によって細かく分かれる相手の反応などの関係もあり、思わず選びたくなるような選択肢も多く存在している。

対して脇役は少しなりを潜めている印象が強い。
特に男友達である良一や天善はミニゲームや日常シーンでは多く登場して、場を明るくしてくれることも多かったが、シナリオの本筋に絡む機会がなかったのは少し残念な所。
(シナリオの構成上からみにくいのはしかたがないが…)

作品のシナリオとは少し別の部分ではあるが、ミニゲームとして天善との卓球勝負や島モンファイトという収集&対戦要素ありのゲームが用意されており、それらと関連して『レコード』という収集要素まであるため、物語を隅々まで楽しみたい方はこれも100%を目指すとよいだろう。
(※本作は十二分に長いが、コンプリートを目指すとこれまた非常に長い)


共通√【 S 】  3-4h
羽依里が島を訪れてからの約2週間ほどを描いている。
島に住むヒロインたちはもちろん、お世話になる加藤家の面々や少年団とのちょっとしたイベントなどが盛りだくさんとなっている。

ミニゲームやレコードに絡んだ選択肢が多くみられるが、プロローグ以降でヒロインの個別ショートシナリオ部分が以外はやはり楽しい島での日常シーンが主だって書かれている。
誰しもがどこかに置き忘れてしまった、楽しむ心。


Summer Pockets サマーポケッツ サマポケ オフィシャルサイト Key Official HomePage
鳴瀬 しろは√【 S+ 】  2-3h
島の外れで海を眺めていた少女。
クールな言動だが、人見知りで島では孤立しているためいつも一人でいる。とても怖い祖父がおり、しろはも含めて恐れられている。

個別√では排他的だったしろはが少しずつ主人公と心を通わせてゆく様子がシッカリと描かれており、その愛おしさは誰しもが守ってあげたくなるほど。
シナリオは徹頭徹尾まさしくボーイミーツガール、心を閉ざした少女とそれを乗り越えてゆく島の外の少年のお話。
海での祭事、祖父との対決、白鳥島を舞台とした物語は、強い情動や感動こそないものの、繊細に描かれており、イベントを一つずつ越えてゆくことで変わってゆく二人の関係性は、忘れてしまった誰しもが憧れる夏の物語を連想させる。


Summer Pockets サマーポケッツ サマポケ オフィシャルサイト Key Official HomePage (1)
空門 蒼√【 S+ 】  2-3h
島で無防備に寝ていた少女。
出会い方が問題だったため主人公には多少の不信感を抱いていたが、誤解が解けてからは歓迎会を立案するなど非常にフランクに接してくれている。
島では駄菓子屋でアルバイトをしている他、野生の狐『イナリ』を連れているが、本当に狐なのかは不明。

いつも笑顔で元気な蒼、いわゆるツンデレに分類される彼女の個別√では、チョロインっぽさを前面に押し出してきており、非常に可愛く描かれている。
シナリオ自体は『記憶』をテーマにした物となっており、道端だろうと眠ってしまう事や、山で行われる祭事等、彼女の抱える問題と絡め、優しく紡がれる少し不思議なストーリーとなっている。


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紬 ヴェンダース√【 S++ 】  2-3h
灯台で異国の古い歌を口ずさんでいた少女。
ドイツ系のハーフのため目立つ見た目をしているが、性格は真面目で素直。ただ主人公とはどこか抜けたやり取りをすることが多い。
口癖は「むぎゅ」で、困った時などによく口にしている。

どこか天然で不思議な雰囲気を醸し出す紬。共通ルートにおける彼女との時間は穏やかでのんびりと過ぎてゆく時間を描いており、その中で見せる紬のマスコット的な可愛さというのが非常に際立っていた。
しかし、個別√におけるシナリオは共通ルートと対比するように『限られた時間の中での煌めきの日々』というものを印象付けるものになっており、特に後半に置ける怒涛の展開、シーンの数々は涙なしでは見られない屈指の泣きシーンが詰まっている。


Summer Pockets サマーポケッツ サマポケ オフィシャルサイト Key Official HomePage (2)
久島 鴎√【 S++ 】  2-3h
島で出会った大きなスーツケースを引いて島をさまよっている少女。
良く言えばフレンドリー、悪く言えば図々しい性格をしており、夏の間だけ島に滞在することになっているらしいが、出会ったばかりの羽依里とも親し気に接している。

共通ルートから個別√にかけて、鴎と過ごす日々は終始『ひと夏の冒険』という言葉に締めくくられる。

誰しもが憧れるであろう夏の冒険譚、数々の謎や探索を超えて目指す秘宝。
どうしようもなくワクワクする設定とは裏腹に、終盤において待ち受けている展開は少し切なく、涙を流してしまうようなシーンもある。
幼い日に夢見たあの冒険の物語をもう一度、そんなどこまでも優しく人を想う気持ちが込められた物語を鮮やかに描き出した√となっている。


ALKA、Pockets√【 EX-- 】  2-3h
何を語ってもネタバレになるので詳細は伏せる。
言うまでもなくグランドルート、TRUEに相当し、今までの伏線を総ざらいする内容となっている。
設定上少しややこしい点があり、そのあたりは考察サイト等を参考にする必要はあるものの展開は涙亡くしては見れないシーンの連発。
まさしく『Summer Pockerts』と言いいたくなる、それほどシナリオと演出がみごとに合致し、高いレベルで表現されている。


[ 主人公 ]鷹原 羽依里
亡くなった祖母の遺品整理を手伝うために鳥白島にやってきた。
比較的誰とでもすぐに仲良くなれる体質で、好奇心も旺盛。
しかし、地元で何か問題を起こした様子が言動から伺うことができ、今回の旅行を『逃げてきた』と思っている。


【推奨攻略順 : 蒼→紬→鴎→しらは→ALKA→Pockets 】
ヒロイン4人については攻略順はないため、好きな順番でのクリアが望ましい。
ALKAとPocketsはそれまでの√をすべてクリアすると出現する。


CG : 【 S 】
細い線にはっきりとした塗りの絵。
1枚1枚が非常に高い完成度であり、見入ってしまうようなレベルのものも数枚存在する。
全年齢ということもあり、シナリオと関連深いものの枚数が非常に多いのも特徴。


音楽 : 【 EX-- 】
BGM38曲、Vo曲7曲(OP/ED/挿入歌)という言わずもがなの大ボリューム構成。
麻枝さんや折戸さんはもちろん、水月陵さんやどんまるさん、竹下さんらも参加する超豪華なBGMはもちろん高品質で、麻枝さんの『Sea,You&Me』は白鳥島の夏を感じる物になっていて、明るい曲なのだけれどシナリオと合わせると泣かされることも多かった。
竹下さん作曲の『夏を刻んだ、波の音は…』は聞いているだけで切なくなる良曲で、折戸さんの「アルカテイル-recall-」は『願いのかなう場所』や『銀色』に迫る様な破壊力の高いBGMとなっている。
Vo曲はEDにさっぱりとした曲調の『Lasting Moment』、聞いていると涙が止まらなくなる旋律の非常に美しいグランドEDの『ポケットをふくらませて』などなど、他にも数多くのBGMやVo曲がそろっているが書き切れない。。。ぜひ作中で聞いてほしい所。


お勧め度 : 【 S++ 】
昔からのKeyのファンはもちろん、これからこの世界に踏み込もうと考えている方、まったく興味がないけど絵が可愛い、キャラが可愛い、そう思っただけの方…どのような方にもお勧めしやすい名作。
仲には煩わしいと思われがちな、ミニゲームや収集要素もあるが、ゲームシナリオには関係ないので、ご安心いただきたい。


総合評価 : 【 S++ 】
完成度としては数多くある他作品の追随を許さぬほど高く、特にシナリオと音楽に関してはKeyの強みをこれでもかと見せつけたものになっており、この評価。

(ぶっちゃけコーナー)
一言目に言いたいのは、

あのKeyが帰って来た!!!!!!!!!!

という一言。
Keyにとって夏というのは『AIR』と比較対象になる作品ということもあって、この作品でどういう方向性にしていくのか…というのがすごく気になっていた。
(※あとやっぱりRewriteで少し心配になった)

実際、共通ルートでは「これでもか!」というほどのミニゲーム要素や笑える日常シーン、それらの雰囲気こそ気に入ったものの、それ以外で琴線に触れるものは無く、そのまま個別ルートをしらは→蒼の順番でプレイしたが、心配は深まるばかりだった。

この二人はキャラクターこそ、個人的にすごいヒットしているんだけれども、期待度の関係もあってシナリオは中の上というか、『まぁまぁ、このくらいの作品になっちゃったか…?』っておもってた。

それが一変しだしたのは、紬√あたりからだろうか。

正直彼女の設定は、新しさを感じるもののその芯にあるものは、今までのKeyにおいても得意といえるシチュエーションが多く、古き良きシナリオが見事に再現されていた。
その勢いは4周目にあたる鴎√も同様で、だからこそ『帰って来た』と思ったのだ。
がらりと評価が変わったのはもちろん作品の舞台に慣れていったこともあるのだろうけれども、特にサブキャラたちがよく協力しているのも良かったのかもしれない。

そして迎えた『ALKA』と『Pockets』。
ネタバレはしたくないので詳細は伏せるが、本当によく泣けた、それだけは声を大にして言いたい。
泣きゲーとして申し分ない内容だし、Keyの強みをこれでもかと見せつけられる内容になっている。これは鍵っ子としての贔屓目無しにしても非常に良いシナリオだ。

たしかに過去の名作たちと比べるとその破壊力も、頻度も少しだけ劣るように思う。
ただ麻枝さんがシナリオ抜けてからの作品ということを考えて、凄く不安だったんだけど、それを払拭する分には十二分だったんじゃないだろうか。
他社の多くが分割商法や続編なんかを作り続ける昨今、一つの新作でこれだけの力を魅せられるということ自体がKeyにとっては非常に朗報ともいえる。

他にも質が高くなった音楽(特にBGM)や、美麗なCG、非常に綺麗になったグラフィック等々…色々と言いたいことは尽きないのだが、最後に一つだけ言って締めたい。

この作品のタイトルでもある『Summer Pockerts』――幼きあの夏の日にズボンに入れたまま忘れてしまった宝物――まさしくこの作品を表していると言えるだろう。
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